ナツはタイに来てすぐから、外国人が多く通うタイの私立病院で、てんかんを診てもらっています。
穏やかで優しい、タイ人の小児神経科の先生です。
日本では半年に1回受けていた脳波検査も、こちらでは1年に1回でいいと言われ、タイへ来る直前に脳波検査を受けていたため、こちらの先生には、数ヵ月に1度、血液検査をして、日本で飲んでいたのと全く同じ薬を出してもらっていただけでした。
しかしタイへ来て1年が過ぎ、今後もあと数年はタイにいる予定であることから、主治医の先生に、一度こちらで脳波検査をして、先生のお見立てをお聞きしたいとお願いしました。
この先生を紹介してくれた友達から、タイの先生は、いろんな薬を試して、積極的な治療をしてくれると聞いていたからです。
日本では、発作もここ数年は出ていなかったので、現状維持の治療が続いていました。
かれこれ12年同じ薬を飲んでいますが、脳波検査をすると、変わらずてんかん波が出ており、ずっと良くも悪くもならないという状態でした。
この機会にこちらで脳波を診てもらうのも、今までとは違う治療法や可能性を聞けていいかもしれないと考えました。
先生は、すぐさま脳波検査の予約を取ってくれ、タイで初めて脳波検査を受けることとなりました。
日を改めてやって来たのは、病院の脳波検査室。
基本的には検査室の感じも、検査のやり方もほとんど日本と一緒でした。
ナツも小さい頃から何度も受けている慣れた検査なので、特別嫌がることもなく、素直にベッドに横になり検査開始。
しかし日本では検査の前に睡眠薬を飲ませていましたが、それがありません。
小さい頃は嫌がって動いてしまい、眠らないと電極もつけられない状態だったので、薬は必須でした。
ここ数年は、すっかり大人になり、まだ起きている状態で電極をつけ、その後睡眠薬にサポートしてもらう形で眠りにつくという流れで、少量使っていました。
看護師さんに、日本では、睡眠薬を使って眠っていたんですが・・・と言うと、大丈夫、大丈夫そんなの必要ない!と笑いながら言われました。
じゃあ、どうやって・・・と聞くと、「by one self!」
ああ、自力ですか!
う~ん、こんな時間に眠れるかなぁ。
時間は午前10時。
脳波検査に備えて、昨晩は遅くまで起こしておいて、朝は早めに起こしてと睡眠時間短めにはしておいたけど。
とりあえずチャレンジで、私がベッドの隣で「なっちゃん、寝るんだよ~」と背中をとんとん。
ナツも目を閉じて寝たふりをするけれど、もぞもぞ動いてなかなか眠れない様子。
でもここで寝てもらわねば!と私も頑張りました。
忍耐強く、寝ろ~寝ろ~と念を飛ばしていたら、徐々にウトウトしてきて・・・。
しかし時々様子を見に来る看護師さん、もうちょっと静かに歩いてもらえないかねぇ。
何故か検査室のドアは少し開けたままで、外の検査技師さん達の声がうるさいし。
もう少し、気を使ってもらえないかなぁ。
それでも何度かウトウト→ハッとして目を開けるというのを繰り返したあと、40~50分掛かりましたが、とうとう寝入ってくれました!
はぁ、やれやれ。
検査中は、私も部屋の隅でじっと動かず、ナツを見守りつつ、ちょっと休憩。
最後まで問題なく、検査することができました。
そんなこんなで検査室を出て。
まぁ、予想はしてたしね、思った通りで笑えもしなかったけどね。
待ち合い室で待ってた夫、がぁがぁ寝てたよね。
全く人がナツを寝かせるのに苦労してるときに。
こんなこと前にもあったな~。
夫を起こし、続いて主治医の先生の診察へ。
先生はナツの脳波を見たあと、自分の見解をお話ししてくれました。
日本語通訳さんを介しての説明なので、ちょっと日本語がおかしくてわかりづらいところや、先生もうちょっとしゃべってた気がするけど・・・なんか短くない?なんてところもあったので、微妙なニュアンスとか、聞き取れてないところもあるかもしれませんが、何度も確認しつつ、話を聞きました。
先生はまず、薬の変更の提案を。
現在ナツが飲んでいるのは、テグレトール、マイスタン、エクセグランの3種類。
この中のテグレトールを、先生はよく思っていないよう。
正直、タイの神経科医で、この薬を出す医者はほとんどいないと言われました。
え~!そうなんだ。
テグレトールは、てんかんを発症した最初からの付き合いだよ。
先生が言うには、テグレトールには、逆に発作を誘発する可能性もあるそうな・・・。
家に帰ってからネットで調べてみたところ、確かに発作の種類によっては、そういう報告もあるようです。
ナツの場合にはそれが当てはまるのかは、ちょっとよくわかりませんでしたが・・・。
先生は徐々にテグレトールを減らしていき、最終的には止めましょうと言われました。
先生は本当にテグレトールを評価してないようで、今まで日本と同じ治療法で行きましょうということだったから、仕方なく出してはいたけど、実はかなり不本意だったのかなと思ってしまいました。
その反面、エクセグランは、ナツに合ってるいい薬だと評価しているようで、テグレトールを減らした分、エクセグランを増量しましょうと提案されました。
発作が落ち着いている今、全くの新しい薬を試すのは不安だけど、今まで飲んでいる薬の比率を変えるだけならやってみようかなと思いました。
もう何年も同じ薬を飲んで来て、脳波に変化もないことから、夫婦で話し合い、もし減薬して少しでもおかしいことがあればストップすればいいことだから、とりあえずやってみようという結論に至りました。
ナツの脳波に異常波が出るのはいつも寝入りばなで、覚醒時の脳波には異常がないことから、もし減薬によって発作が出たとしても、家で寝ているときなら対処できるということも後押しになりました。
最初の1週間は、今まで1錠と1/2飲んでいたのを1錠に減らし、次の1週間は1/2錠にし、更に次の1週間は0錠にと、段階を踏んで減らしていくことになりました。
この間私は、ナツの様子をじっくり観察です。
そうやって少しずつ減らして様子を見つつ、1か月後にどう変化があるか、もう一度脳波検査をして見てみましょうということになりました。
こうして、タイで初めての脳波検査は終わったのでした。