思い出の本

このブログに遊びに来ていただいている方の中で、「佐々木丸美」という名の作家をご存知の方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。
もう20年以上も前になってしまいますが、デビュー作の「雪の断章」が斉藤由貴さん主演で映画化されたので、それでご記憶に残っている方がいるかもしれません。
佐々木丸美さんは、昭和50年にデビューし、その後18冊の小説を刊行されました。
しかし昭和59年を最後に休筆されていて、長年根強いファンが新刊が出るのを心待ちにしていました。

長い休筆の影響か、いつしか佐々木丸美さんの本は書店から消え、非常に手に入りにくい希少本となっていました。
ネットオークションでも高値で取引されたりしていました。
私も10年以上前に、何とか全ての著作を手に入れようと、古本屋を探し回りました。
それでも見つからなかったので、今ならインターネットになるのでしょうが、当時発行されていた「じゃマール」という売ります買います掲示板のような雑誌で、結構なお金をかけて揃えました。
本棚に全ての著作が並んだのを見たときには、感無量だったのを覚えています。

そんな長年多くのファンに新刊が待たれながらも、既刊本さえ全く見かけない、入手するのも難しいという寂しい状態が続いたのですが、昨年暮に、なんと全巻復刊されることになりました。
数年前から熱心に復刊運動をされている方がおられて、HPで復刊希望を募ったり、佐々木丸美さんご本人にお会いして、お願いに上がったりしているのは知っていました。
しかしご本人は、復刊には乗り気ではなかったようなので、大いに期待しつつも、もう佐々木丸美さんの著作が日の目を見ることはないのかと思っていました。

しかし平成17年の12月、佐々木丸美さんが突然お亡くなりになってしまいました。
まだ56歳の若さで、いつか佐々木丸美さんの新作が読みたいと思って待ち続けた多くの読者に衝撃が走りました。
その後、ファンの強い希望と、佐々木丸美さんのご親族のご好意などもあり、復刊が決まりました。
ご本人が復刊を決めかねていたのに、今こうして続々と復刊されるというのは、少し複雑な気持ちではありますが、長年書店で見ることがなくなっていた佐々木丸美の文字をもう一度見ることができ、また新たな読者の方の手に渡るというのは、とても嬉しいことです。

しかし私は著作を全て持っているので、今回復刊されるに当たって、もう一度新たに揃えるべきか非常に悩みました。
しかし復刊本には、文庫にはなかったあとがきが入れられたり、雑誌掲載だったエッセイが挿入されたりとかなり魅力的な要素がありました。
その上、発行元の「ブッキング」で全巻予約すると、特典が付くというではないですか。
内容は佐々木丸美さんに関するさまざまな資料と、佐々木さんが書き遺した作品に関する資料をまとめた50ページの冊子。
他では手に入らないというのが、たまらなくファンの心をくすぐります。
これが気になってしまい、思わず全巻予約してしまいました~。

先月、刊行第1巻の「雪の断章」が家に届きました。
美しく真新しい本を見て、感激してしまいました。
私が高校生のころ、衝撃を受けて大ファンになり、何度も読み返した本です。
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このブッキング刊の「佐々木丸美コレクション」のほかに、東京創元社より「館」シリーズも同時に復刊されました。
こちらはミステリィ色が強いですが、読み応えのある秀作です。
私は佐々木作品ではこのシリーズの「崖の館」が一番好きなので、機会があればぜひどうぞ。
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学生時代にはまった思い出の本が、また美しくよみがえる。
これから毎月刊行が続くので、しばらく楽しめそうです。

by mineyom | 2007-01-22 10:55 | 暮らし